防火ダンパーとは?~設置基準と基準を満たすための構造~

「防火ダンパーの仕組みはどうなっているんですか?」
「防火ダンパーは消防法?それとも建築基準法?」

このような質問が急増しています。
防火ダンパーは弊社の年間案件の2割程度を占めています。

防火ダンパーは空調や換気に使用するダクトに使用されるものです。
ダクトが防火区画を形成する壁や床などを貫通する場合、
防火区画を形成するために設置される製品です。

防火ダンパーの作動機交換の施工事例🔍

調査または御依頼する場合、「いつ、どのような症状が出るのか」を
確認することが必要です。

例えば

  1. 防火ダンパーの設置状況などの現状
  2. 不具合の症状はいつ、どのタイミングで、どのようなものなのか

このように現状や原因が分かると、修繕の打ち手が定まります。
実際にご相談いただいた代表的な内容が下記です。


管理会社様

自火報での連動・手動閉鎖装置で起動させても、
防火ダンパーが閉鎖しない不具合があるので、直したいです。

点検会社様

点検の時は、作動したが、復旧しない。

なぜですか?

このような不具合は原因が分かると、お客様へスムーズに
修繕の提案ができ、手間が少なく、的確に修繕できると考えています。

今回は不具合に対する修繕の原因を特定できるよう、
法令や実例をもとに、まとめました。

この記事を読み、現地で直面した際、
スムーズに、修繕提案につなげられるよう、書いてまいります。

防火ダンパーはなぜ設置されているのか?

そもそも、防火ダンパーはなぜ設置されているのか?
それは、「防火区画を貫通するダクトがあっても、防火区画を形成するため」です。

基本、防火区画を形成する際、区画に穴が開いていることは
原則NGです。
しかし、建物内に空調や換気設備を設置する際、どうしても
建物の部屋を貫通したり、外壁を貫通しなくてはなりません。
その際に、防火区画を形成するために防火ダンパーを使用し、
防火区画の穴を無くし、区画を形成するために防火ダンパーを設けます。

防火区画を形成することで、延焼(別の箇所へ火が移ること)を防ぎます。

その役割を果たすため、防火ダンパーは
建築基準法、消防法を基に設置されています。

建築基準法での規定

建築基準法では、防火ダンパーは「風道が防火区画または床を貫通する場合」
使用されると記載があります。
※詳細は建築基準法施行令(昭和二十五年政令第三百三十八号)第百十二条第十六項より

また、建築基準法では、防火ダンパーは下記要件を満たす必要があると明記されています。

防火ダンパーの構造・設置について

①性能

  • 火災発生時、煙や温度上昇を感知して自動的に閉鎖します。
  • 閉鎖時には、煙を遮断する性能が必要です。

②構造・設置

  • 材質: 鉄製で厚さ1.5mm以上の鋼板が使われます。
  • 自動閉鎖: 煙や温度を感知して自動的に閉鎖する機能が必要です。温度ヒューズが使われることが多いです。
  • 検査口: 点検やメンテナンスのために、開閉状態を確認できる検査口が必要です。
  • 設置: 建物の主要構造部(壁や床など)にしっかりと固定します。
  • 点検口: 天井や壁に、点検しやすい45cm角以上の点検口を設けます。

③関連法規・仕様書

  • 建築基準法: 性能や構造について規定されています。
  • 国土交通省告示: 具体的な構造や設置方法が定められています。
  • 公共建築工事標準仕様書: 材料や施工方法について詳しく規定されています。

試験・点検

  • 試験: 漏煙試験や温度ヒューズ作動試験など、性能を確認するための試験が必要です。
  • 定期点検: 建築基準法により、年1回の定期点検が義務付けられています。

その他

  • 選定・設置: 専門家(設計士や施工業者)に相談し、適切な製品を選定・設置することが重要です。
  • 種類: 風量調整ダンパーや逆流防止ダンパーなど、様々な種類があります。

参照:三功工業所様:ダンパーの法的順守事項

消防法での規定

消防法でも基本は延焼を防ぐため、防火区画を形成するために
使用するようです。

消防法でも使用される”防火ダンパー”は
建築基準法施行令第112条第19項第1号に定める
構造のモノを使用するようです。

壁にガラリや換気扇等を設ける場合は、合わせて防火ダンパー(防火設
備であって、建基令第 112 条第 21 項各号に規定する要件を満たす構造の
ものをいう。以下同じ。)を設けることが望ましい。

※出典:消 防 庁 予 防 課 長「対象火気設備等を屋内に設ける場合の外部への延焼防止措置が講じら
れた室に係る事例について(通知)」
より

燃焼機器の煙突や排気筒には、防火ダンパーを
設けてはいけないことも、要注意です。

防火ダンパーの構造と仕組み

建築基準法施行令で定められている防火ダンパーについて、
前章で触れました。

ここでは、実際の防火ダンパーの構造や、
作動する仕組みについて、ご紹介します。

防火ダンパーの構造

出典:日本防排煙工業会:防火ダンパー参考図より

防火ダンパーは上記写真のような構造をしています。


不具合として「自動閉鎖装置の不良」「可動羽根・軸・軸受の固着」
「連結金具の固着」が多いです。

防火ダンパーの仕組み

防火ダンパーの作動方法を主に2つです。

  1. ヒューズが熱で溶け、作動する。
  2. 煙感知器等により、受信機(防災盤)連動により作動する。

以上の方法があります。
自動閉鎖装置の状態は下記のようになっております。

ヒューズが解けた場合、作動した状態
復旧状態(作動していない状態)
火報連動した場合、作動した状態

防火ダンパーのご依頼を頂く際、
点検時の作動状態がうまくいっていない場合が多いです。
実際に調査する際、「作動しない」という症状の場合、
上記のように作動しているかを確認するだけでも、
分かることが多いです。

防火ダンパーの修繕事例

実際は防火ダンパーの種類が多いことや、
不具合症状や原因が多様なため、弊社で実際にあった
事例を基に一部事例をご紹介します。

あくまで一例ではありますが、現場でお役に立てるように
ご紹介できればと考えております。

不具合症状①:火報連動や手動起動で閉鎖しない

不具合症状①として、最も多いのが、
「火報連動でも手動起動でも閉鎖(作動)しない」という症状です。

この場合は防火ダンパーの羽根・軸や軸受部・連結金具の固着が
ほとんどの割合を占めています。

特に軸や軸受部の場合、固着も多いケースですが、
経年劣化により、羽根と軸の連結部が削れ、回らないというケースもあるため、
竣工から長い年月の経つ建物はダクトを含め、交換することが多いです。


※防火ダンパーのダクトパッキンに石綿が含まれている
 可能性がありますので、ご注意ください。

不具合症状②:点検時に作動させたら、復旧しない

緊急として、ご連絡いただく機会が多いのが、
この「復旧しない」です。

原因はさまざまですが、大きく分けて3つです。

  1. 防火ダンパーのヒューズが解けてしまっている。
  2. 火報連動の電気信号が復旧しない。
  3. 自動閉鎖装置が不具合を起こし、復旧しない
クリックして写真:ヒューズが溶け、
 復旧できない状態
クリックして写真:ヒューズを交換、
 修繕作業後

まとめ

ご一読、誠にありがとうございます。
ここまで、できる限りではありますが、
分かりやすく、現場でお役立ちできるよう、
書いてきました。

ご不明点や、このような解説が欲しい等、
リクエストがありましたら、お問い合わせいただけますと幸いです。

次回もよろしくお願いいたします。

投稿者プロフィール

アート シャッター
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アートシャッターは1996年の設立以来、会社設立の地である千葉県を中心に
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シャッターメーカー様各種のお取り扱いと25年の経験を活かし、
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